よく聞く炎上とは何?ネット上で炎上しないためには?
炎上とは、不祥事などをきっかけに非難や誹謗中傷が集中する現象です。炎上を起こしてしまうと、個人情報の特定やさらなる嫌がらせなど、多大な不利益を被り、取り返しのつかない事態になることもあります。炎上を起こさないためには、情報やSNS投稿に対する意識を高く持ち、節度ある使い方をすることが大切になります。
そもそもネット上の炎上とは
炎上とは、燃え上がるという比喩で表現されたネット用語です。不祥事などをきっかけに、特定のブログ等に大量のアクセスや非難・批判・誹謗中傷コメントが集中し、そのためにサーバーの動きが鈍ったり、パンクして動かなくなったりする状態を指しています。
ネットコミュニケーション過剰で起きる問題
ブログやSNSでは、投稿に対して誰でもコメントを残すことができるのが一般的です。
本来そこは、建設的で楽しいコミュニケーションがされる場のはずですが、不用意・不適切な発言や写真の投稿などがあると、途端に非難、誹謗中傷が吹き荒れるところになってしまいます。
ブログのコメント
日本では、ブログが一般に認知され始めた2004年頃から、ブログにおいて炎上が発生するようになりました。炎上中のブログを探して楽しむ「炎上ウォッチャー」と呼ばれる人が出現し、炎上中のブログをまとめるウェブサイトも存在します。
SNSはボタンひとつで拡散される
炎上は、SNSやスマートフォンの普及によって、さらに起きやすくなりました。
代表的なSNSである「Twitter」や「Facebook」では、感覚的に写真や文章を投稿できてしまうため、不用意な発言が増えました。さらに、ボタンひとつで瞬時に他のユーザーと情報共有できるため、拡散スピードが格段にはやまったことが、炎上事件が多発する大きな要因であると考えられます。
炎上が始まると行きつく先
実際に炎上が起きるとどうなるのでしょうか。従業員が炎上を起こした場合、個人のことなので会社としては関与したくないというのが本音かもしれませんが、現実にはそれでは済まないことが多いようです。
個人の特定
炎上が起きると、その炎上の原因となった人物が誰かという「特定」作業がネット上で始まります。これは、法律的な特定作業とは全く別のものです。
該当の人物が過去にSNSやブログなどに投稿した内容や、関係のある他のSNSアカウントなどを参考に、どこの誰なのかをネット民たちが推測と調査を繰り返しながら明らかにしていくのです。
電凸
人物が特定されると、自宅や勤務先などが明らかにされてしまうこともあります。勤務先がわかると、そこに「電凸」が行われることもあります。
「電凸」というのは、「電話で突撃する」という意味のネットスラングです。不満のある企業や団体などに対して一般消費者の立場で電話をかけ、直接企業としての見解や立場、対応などを問うこと言います。この電話のやり取りや企業としての回答は、当然ネット上にさらされ、対応が悪いと、企業までもが批判の対象にされてしまいます。
まとめサイト、ニュースサイト
炎上し始めている場を見つけると、有志によるまとめサイトの立ち上げが行われます。そこでは、炎上に至った事件の経緯とその後の経過が整理されて解説される他、電話やメールなどで抗議する際のテンプレートまで用意されることがあります。こうなると、炎上はかなり深刻な事態に達していると言えます。
まとめサイトから大型掲示板に飛び火し、ニュースサイトなど各種メディアに掲載され、SNSにフィードバックされ・・・と、情報があちこちに回っていくことで炎上は加速し、被害が拡大していきます。
炎上してしまったら
企業にとって、炎上への対応は非常に重要です。対応方法によって、「延焼」になるのか、早期「鎮火」できるのか、その後の様子が大きく変わってきます。では、どのような対応を取ることが望ましいのでしょうか。
炎上の対応方法
個人はアカウント削除
炎上が発生してしまったら、まず個人アカウントはすぐに削除しましょう。反論などはせず、炎上したツールだけでなく、他のツールアカウントも含めて消してしまいます。
アカウントを残しておくと、過去の書き込みから個人情報が暴かれたり、さらに炎上が拡大したりするおそれがあります。
企業は見解を発表せよ
企業は、炎上を発見したらまず事実関係を見極めましょう。その上で、把握した事実関係をもとにした見解の発表をするのが重要です。適切な対応がされないと、炎上がさらに拡大する可能性も十分にあるので、注意が必要です。
十分な事実確認を行うことが出来ない場合は、現在把握している事実関係はどこまでか、対応策としてはいつまでに何をするのかなどを発信しておきましょう。
発表する方法としては、原則的にはプレスリリースを使用したり、ホームページに掲載したりすべきです。「形式」を整えることは、炎上を鎮火させるうえで有効な策であることを覚えておいてください。
炎上を放置するのはリスクでしかない
ネット上の情報は削除しない限り残り続けます。炎上すると、虚偽の情報が本当かのように飛び交うことも往々にしてあります。対応をしなければ、今後もあることないこと含めて、ネット上に流れ続けるリスクが生じることになります。
逆に、きちんとした対応や主張をすれば、その反論もネット上に残り続けます。後から事情を知らない人が見たときに、企業の公式な立場や見解が見られるのは大事なことです。企業は、炎上を放置せず迅速、丁寧な対応をするようにしましょう。
炎上が起こる原因
炎上を起こしてしまう原因として、「SNSやネット利用に関するリテラシーが低い」ということがしばしば指摘されます。その通りではありますが、ではどうすれば、炎上を防ぐことができるのでしょうか。
炎上の例
学生が悪ふざけの写真をSNSに投稿し、学校やアルバイト先に苦情が殺到。投稿した人は退学や休学に追い込まれる。店員が有名人の来店など顧客のプライベート情報をSNSに書き込んで解雇される。ここ数年で、そんな炎上が数多く起こるようになりました。
不注意や不祥事
いわゆる失言という形で現れる、その人の人格の根底が見えるものに対して、批判が集中することがよくあり、炎上を発生させる原因になることが多いです。
バイトテロ
2011年頃、飲食店などのアルバイトが、業務用冷蔵庫に入ったり食品の上に寝そべったりと、悪ふざけした写真を撮ってTwitterなどにアップする、いわゆる「バイトテロ」と呼ばれる行為が話題になりました。
バイトテロ投稿は炎上を招き、当人たちだけでなく店の責任を問う声も多く挙がります。
SNSへの意識の低さ
SNSに書き込んだ内容は、無制限に広まる可能性があります。不特定の人の目に触れ、拡散するリスクは、SNS上の友人の数とは関係ありません。たとえあなた自身のフォロワー数が100人だとしても、100人のうちの1人に10000人のフォロワーがいて、その人があなたの投稿をリツイートすれば、10000人にも配信されることになるのです。
情報は公開されている
SNSはネットに接続され、世界中に公開されています。スマートフォンの普及により、常時ネットを利用することが可能になり、いつでも好きなときSNSコミュニケーションを取ることができるようになりました。あまりに身近で手軽なため、ネットに接続されていることがどういうことなのかを理解できていない人も多くいるのではないでしょうか。
仲間内だけのやりとりだと思って気軽に公開していたものが、本人の意に沿わない形で引用され、炎上に繋がることがある。ネットに繋がっているというのはそういうことです。
個人は特定される
ネットの書き込みは匿名性が高いと思ってはいませんか?確かに、多くのサイトではハンドルネームなどを自由に設定でき、自分が誰かを明かさずに意見を発信できるというイメージがあります。
しかし実は「匿名」なのは見かけ上だけのこと。現実には、発信者情報開示請求などを通じて、誰が何を書き込んだかを特定することが可能です。また、自分としては匿名にしているつもりでも、過去の書き込みなどから推測すると、かなりの精度でどこのだれなのかがわかってしまうものなのです。
匿名であるという感覚と、多くの人が1つの事柄に対して批判を行っている場合に、意見が孤立する心配がないという安心感が生まれ、その結果、ついつい炎上現場で言い過ぎてしまう人を多く見かけます。ネット上では匿名であるという誤解が、炎上を過激にしている要因のひとつと言えるかもしれません。
逆に目立ちたい人
SNSを利用している人の中には、注目されたい、認められたいという強すぎる自己承認欲求や自己顕示欲を持った人が一定数います。そのような人のゆがんだ言動が炎上の火種となることは多々あります。
自己顕示欲の強い人
自己顕示欲が強い人は、他の人とは違うことを「見せつける」ために、敢えて過激な発言や極端な意見、場合によっては犯罪自慢などを書き込むことがあります。当然ながら、そのような書き込みは反論や批判を招きやすく、炎上を引き起こす可能性が高くなります。当然、犯罪を自慢しても非難されます。
社会常識は必要
ネットは何をしても良い場所だと考えている人が一定数いて、そのような人たちがネット上で非常識な振る舞いをしています。
しかし、実際には一般常識や見識が疑われるような書き込みに対して、ネットの世界こそ厳しい反応を見せているのではないでしょうか。一斉にバッシングが起きることも少なくありません。意図的であれ無意識であれ、社会常識のない書き込みは非難され、炎上するリスクがあるのです。
ネットの世界でも実世界でも、やはりやってはいけないことは、やってはいけないということです。
炎上しないために
炎上を起こしてしまうと、実名も含めたあらゆる個人情報が世界中に流出してしまいます。しかも、ネット上の行動は半永久的に記録が残ってしまい、不利益は、トラブルが発生したその時だけで終わらないことがあります。
人生の分かれ目で後悔することがないよう、日頃から振る舞いには気をつけなければなりません。
ネットの世界にも迷惑な人はいる
現実世界にも「クレーマー」と呼ばれる人たちが存在するように、ネットの世界にも、Web上でつきまとって、常に誹謗中傷を浴びせてくる「ネットストーカー」がいます。炎上を避けるためには、このような人たちと関わらないように注意しましょう。
ブログのコメント欄、問い合わせ蘭を閉じる
炎上を発生させないための最も確実な方法は、ブログのコメント欄や企業ウェブサイトの問い合わせフォーム・掲示板といった「炎上が発生しうるような場」を、初めから設定しないことです。極論かもしれませんが、迷惑なコメントに振り回されず情報発信ができる、案外有効な手段かもしれません。
SNSの公開範囲を設定
SNSでは必ず、投稿を閲覧できる人を限定するよう設定をしましょう。特に突っ込んだ内容の話題の時は、公開範囲が限定されているか、改めて確認してから投稿するようにしましょう。
サービスによっては、外部から自分のアカウントを検索されないようにできる機能もあります。無用なトラブルを避けたいのであれば、こうした機能を活用するのもよいでしょう。
危うい発言はしない
炎上が起きる原因として、どのような書き込みが炎上の火種になるかをわかっていないということがあります。炎上を避けるには、問題とされやすい書き込みの傾向を知っておき、そのような書き込みをしないよう気を付けるようにしましょう。
誹謗中傷はしない
面とむかって言わないことも、Twitter上だと人格がかわり、心ないことを言ってしまう人がいます。ひどい罵り合いになり、そこから炎上が起きるケースもあります。
現実世界でもネット上でも、誹謗中傷されて喜ぶ人はいません。安易に他人を傷付けることはやめましょう。
デリケートな問題には言及しない
政治的な発言や思想・信条に関わるものなど、きわどい発信は、誹謗中傷を受けるリスクが高いです。誤解を招く言葉にならないよう十分注意するか、そのようなデリケートな問題には言及しないようにしましょう。
著作権や機密情報の取扱いに注意
SNSでつながっているのが特定の信頼できる友人だけだとしても、インターネットを利用している限り、投稿内容は全世界に共有されています。何かのきっかけで、多くの人の目にさらされる可能性を秘めていることを忘れてはなりません。
不用意にでも情報を流出させて炎上することがないよう、特に著作物や企業の機密情報など、第三者に見られて困るものではないか、投稿前に考えることが大切です。
社内体制の整備従業員教育の重要性
炎上は、社会経験の乏しい若者が起こすという先入観を持っている人も多いですが、必ずしもそうではありません。管理職が発信した情報が炎上事件になったという例もいくつもあります。
企業として炎上の怖さや影響力などについて、研修などを通じて社内に伝える必要があるでしょう。
顧客対応マニュアル
従業員のまずい対応が原因で炎上する事例が見受けられます。おざなりな顧客対応に怒りを覚える消費者は多く、また同じような対応を受けた人の共感を得やすいため、SNSで広まっていくこともあります。
至らない顧客対応や説明不足で炎上を起こさないよう、顧客対応マニュアルを整備し、それを個々の従業員が実践できるように徹底しておきましょう。
就業規則
不祥事があった場合に、企業としてその従業員に懲戒などを行うのも必要な措置です。そのためには、就業規則で懲戒事由と懲戒の内容を定めておきましょう。
ガイドライン
リスク予防の視点では、まず企業がSNS利用を推奨するのか制限するのかというスタンスを明確にしておくことをおすすめします。
推奨する場合は、SNSに慣れていない人でも安心して適切に行動できるガイドラインを策定するのが良いでしょう。
炎上は、誰もが起こす可能性がありますが、多くの人は「自分は大丈夫」だと思っていて、危険性に気付いていません。過去の炎上事件、ニュースなどで話題となる事例を題材に、どのような書き込みが炎上するのか、また炎上したら自分にどんな不利益が襲い掛かるのかを知っておくことが重要です。