ファイル共有ソフトとは?違法アップロードや情報漏洩にも注意!
ファイル共有ソフトはP2P通信モデルを用いた、インターネット上で不特定多数のユーザーとファイルを共有できる便利なソフトウェアです。しかし他方でセキュリティの脆弱性や著作権侵害等の重大な問題もあるのです。そこで今回はファイル共有ソフトの仕組みや使用上の注意点、気になるポイント等を具体的に解説していきます。
目次
ファイル共有ソフトとは
ファイル共有ソフトとはインターネット上で不特定多数のユーザーと音楽や動画等のファイルをやり取りする、ファイル共有を目的としたソフトウェアを指します。まずはその仕組みや特徴を解説していきます。
「クライアント・サーバーモデル」を理解する
ファイル共有ソフトの仕組みを把握するためには“サーバー”と“クライアント”を利用した“クライアント・サーバーモデル”を理解することが欠かせません。
そもそもサーバーとクライアントの役割とは
サーバーとはネットワーク上で特定のサービスを提供するソフトウェアや装置のことです。webサーバー、データベースサーバー、メールサーバー等があり、多くのサービスがサーバーによって実現されています。サービスの依頼先をサーバーと呼ぶのに対して、依頼元を“クライアント”と呼びます。例えば私達がネットワーク経由でサーバーを呼び出す時は私達が使用しているコンピューターがクライアントに該当します。
クライアント・サーバーモデル
クライアントとサーバー等コンピューター間では、通信手順やデータ形式を定めた規格である“プロトコル”に従って通信が行われます。プロトコルは機能やサービスに合わせて定められています。例えばwebブラウザとwebサーバーの通信では“HTTP”と呼ばれるプロトコルに、メールソフトとメールサーバーの通信では“SMTP”や“POP”と呼ばれるプロトコルに従うといった具合です。
同じプロトコルを所有しているソフトウェア同士はそのプロトコルを介して通信可能で、この通信スタイルを「クライアント・サーバーモデル」と呼びます。
ファイル共有ソフトのPeer to Peer方式
機能を分離したクライアント・サーバーモデルに対して、役割を固定せず、ネットワークに参加するコンピューターが場合によっていずれの機能も果たすのが、ファイル共有ソフトの通信方式“Peer to Peer モデル”です。
アクセス集中がかかりにくい
“Peer to Peer”とは対等の者(Peer)同士が通信をすることを特徴とする通信方式やその技術の等を指す言葉で、“P2P”とも呼ばれます。サービスの依頼者と提供者で機能が固定されているクライアント・サーバーモデルでは、クライアントの数や要求が過度に増加するとサービスの提供元であるサーバーにアクセスが集中し負荷がかかるの対し、P2P方式では端末数が増えても特定の端末へのアクセス集中がかかりにくいのが特徴です。
P2P方式を利用したサービス
P2P方式の特性を活かした代表的なサービスには「YouTube」等の動画配信サービスがあります。その他、SNSサービスの「LINE」や「Skype」等のIP電話もP2P通信方式を利用したサービスとして挙げられます。
ファイル共有ソフトを詳しく知る
P2Pモデルのシステムそのものには様々な特有の利点があります。しかしその一方でP2Pモデルのファイル共有ソフトには深刻な問題も生じています。
P2Pモデルは様々な場面で応用できる
私達の身の回りにはP2Pモデルの仕組みを活かしたいろいろな機器やサービスがあります。P2Pモデルの通信システムを応用すれば様々なメリットを享受できるのです。
大人数での利用で威力を発揮する
従来のクライアント・サーバーモデルでは、社内におけるテレビ会議等多くのユーザーが利用する際には、サーバーへの負荷等の問題から通信量を抑えることが求められました。しかしそれは取りも直さずデータの質を下げることであり、高い音質や画質は実現できませんでした。
けれども専用のサーバーを必要としないP2P方式では、解像度の高い映像とクリアーな音声を安定して供給することができます。更に大きなモニターでも鮮明な映像の配信が可能で、巨大なスクリーンに映写するときにも見劣りしない為プロジェクターで投影する際にも有用です。
監視カメラに応用するメリットも
P2P方式をネットワークカメラに応用した場合もメリットがあります。例えば“見守りカメラ”は室内にカメラを設置しスマートフォン等と連携させることで外出先や遠隔地から部屋の様子を確認可能な、防犯や見守り等で近年需要の高い監視カメラですが、以前システムがハッキングされてプライベートの映像が覗き見られる事例が問題になりました。
しかしカメラにP2P方式を応用すれば撮影されたデータはサーバーを通すことなくそのまま登録したスマートフォンやパソコンに送信されるため、高い安全性を確保できます。
ファイル共有ソフトにはメリットもあるが重大なデメリットも多い
ファイル共有ソフトには確かにメリットもあります。しかし情報漏洩の危険性等重大なデメリットもあることもまた事実です。更にP2P方式の性質上、そういった被害は瞬く間に広まり完全に消去することはできません。
所有していないデータを手に入れることが可能
ファイル共有ソフトをインターネットに接続されたコンピューターに導入すれば、オンラインでファイルを検索したり、他のユーザーとファイルをやり取りすることができる様になります。つまり、自分が所有していない音楽や画像のデータを手に入れられることがファイル共有ソフトのメリットなのです。
情報拡散に歯止めをかけられない
しかし一方でデメリットもあります。例えば不適切な画像の流出が現在国際的に問題となっていますが、P2P方式のファイル共有ソフトでは、一旦流出した情報は広範囲かつ急速に広まり、拡散を阻止する手立てがないのです。更にファイルのコピーがネットワーク上に大量に作成されればその全て消去することは不可能であり、永久に情報が出回ることになります。
取り締まりを強化するも“いたちごっこ”の状態
一昔前に無料で音楽のダウンロードが可能な某ファイル共有ソフトが爆発的に広まりましたが、後にウィルスの問題や著作権侵害に該当する等の理由でシステムとそのネットワークは閉鎖されました。しかし現在でも同様のソフトは流通しており、取り締まりを強化して摘発してもまた別のソフトが出現するといった具合で対処しきれないのが現状です。
ファイル共有ソフトを利用する際の注意点
この様に、ファイル共有ソフトは違法なファイルのやり取りに使われたり、データが流出してしまうといった問題もあるため、取り扱いには注意が必要です。ここでは知っておくべきことや気になるポイントを解説します。
ファイル共有ソフトの利用には細心の注意が必要
ファイル共有ソフトの多くは収集したファイルを再び公開する仕組みになっている為、情報漏洩対策をしていてもファイルが第三者に渡ることで情報が漏れる可能性があるのです。様々なトラブルの発端となり得るファイル共有ソフトは注意して使う必要があります。
ウィルス感染すれば二次被害も
ファイル共有ソフトをインストールすると、公開するデータを保存する為の専用フォルダーがパソコン内に作成されます。通常ならネットワーク上に公開されるのはフォルダー内のデータだけですが、ウィルスに感染するとパソコン内の全てのデータを公開する設定をされてしまうことがあります。またウィルスが含まれるソフトの多くは安全なソフトウェアを装っているため、感染したことに気付かずに使用し続けるケースもよくあります。その間に公開するつもりのない個人情報もどんどん洩れてしまい、さらにその情報の中に勤め先の機密情報や顧客情報が含まれていれば被害は拡大してしまいます。
パソコンを共有している場合は特に要注意
家族でパソコンを共有している場合等には特に注意が必要です。本人の知らない間に家族がファイル共有ソフトをインストールしたことから情報漏洩が起こった事例も実際にあります。共有のパソコンを使用している場合には個別のアカウントを使用するようにしましょう。
著作権侵害の問題も
ファイル共有ソフトを使用する際に忘れてはいけないのが違法アップロードの問題です。近年問題になっている通り、著作権のある音楽や動画を動画投稿サイト等にアップロードすることは違法行為にあたります。「お金を支払ってCDやDVDを購入したのだから、購入者にはそれをどうするかを決める権限がある」と誤認する人もいますが、代金を支払って得られる権利は「所有権」であり、著作権ではありません。
動画投稿サイトの利用に関して知っておくべきこと
では、現在多くのユーザーが利用しているYouTube等の動画投稿サイトにアップロードされた動画を閲覧したりダウンロードした場合、法律違反に該当するのでしょうか?
現状では閲覧のみなら逮捕はされない
YouTubeの様な動画サイトは“ストリーミング”と呼ばれる形式で配信されています。しかしストリーミングは「プログレッシブダウンロード」とも呼ばれ、視聴する動画はパソコン内の一時フォルダーに保存されます。ストリーミングがダウンロードに当たるか否かは学者や公的機関の間でも見解が分かれており、現状では逮捕される可能性は低いものの、著作権侵害が横行する状態が続けば“見せしめ”的に逮捕者が出ることも考えられます。
ダウンロードすると法律違反になることも
違法にアップロードされたファイルをダウンロードした場合は言うまでもなく違法です。しかしそれ以外でも、原則として著作者に無断で著作物をダウンロードする行為は「私的使用目的の複製」等の場合を除き法律違反にあたります。但し、私的使用目的でもアップロードされた映像や音楽が、著作権を侵害するものであると知っているにも拘らずダウンロードする行為は違法になります。
また2012年には、違法ダウンロードの内有償で販売されているものをそれと知りながらダウンロードする行為を刑事罰の対象とする法律が施行されたことも覚えておかなければなりません。
ファイル共有ソフトには便利な機能があり使用すること自体は違法ではありません。しかし一方でウィルスに感染したり、知らない間に犯罪者になってしまう危険性等もあるので使用には注意が必要です。