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ネット誹謗中傷の対策

  • 2017年03月23日 | 7,952view

発信者情報開示請求の弁護士費用は?ネット誹謗中傷の犯人を特定!

発信者情報開示請求

ネット上で誹謗中傷被害に遭ったら、投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴などを行うことができますが、そのためには投稿者の特定が必要です。投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求という手続きが必要になります。そこで今回は、発信者情報開示請求について、解説します。

発信社開示請求に強い弁護士一覧

発信者情報開示請求とは

ネットを使っていると、いろいろな場面で誹謗中傷やプライバシー侵害などの被害を受けることがあります。インターネット掲示板で謂われないいいがかりをつけられたり、事実無根の噂を流されたりすることもありますし、企業が商品やサービスなどについての不当なレビューを書かれることもあります。

ネットで匿名の誹謗中傷書き込みをした犯人を特定する手続き

ただ、こうした書き込みは通常匿名で行われるので、一見しただけではどこの誰が嫌がらせの投稿をしたのかが明らかにはなりません。このような場合、投稿者を特定するための方法があります。それが、発信者情報開示請求の手続きです。

発信者というのは、ネット上で情報を発信した人ということです。ネット上で投稿をすることも情報発信の1つなので、発信者情報開示請求の手続によって、投稿者を特定することができます。

発信者情報開示請求が認められる根拠

プロバイダ責任制限法とはどのうなもの?

それでは、発信者情報開示請求は、どのような根拠によって認められるものなのでしょうか?これは、プロバイダ責任制限法という法律によって認められます。

プロバイダ責任制限法とは

インターネットプロバイダやサイトの管理者の責任を一定限度に制限するための法律で、正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」という長くて難しい名前です。

ネット上には、利用者からさまざまな投稿や書き込みが行われますが、サイト管理者やプロバイダが、100%それらを見張って違法な投稿を制御することは不可能です。また、不当な記事を削除した場合に、投稿者がプロバイダやサイト管理者を訴えことが考えられますが、そのような訴えが乱立すると、サイト管理者などは不当な書き込みを削除することも難しくなります。

そこで、一定のケースでは、プロバイダはサイト上において不当な投稿が行われた場合にも責任を負いませんし、記事を削除したり、第三者に投稿者の情報を開示したりしても責任を負わないとされています。

プロバイダ責任制限法によって発信者情報開示請求が認められる

このプロバイダ責任制限法において、権利侵害を受けた第三者がプロバイダに対し、発信者の情報開示請求ができることが規定されています(プロバイダ責任制限法4条)。すなわち、ネット上で権利侵害を受けたと考える人は、プロバイダに対して発信者情報(投稿者の情報)を開示請求することができ、それを受けたプロバイダは情報の発信者に対し、情報開示に応じても良いかどうかについての意見照会をすることになっています。

発信者が開示に同意した場合や、照会を無視した場合には、開示に応じても責任を負いません

この場合には、プロバイダから発信者情報の開示を受けられるのです。また、発信者が開示に同意しない場合であっても、権利侵害などが明らかな場合には開示をさせることができます。

以上のように、発信者情報開示請求の手続きは、プロバイダ責任制限法にもとづく手続きです。

発信者情報開示請求の目的

名誉毀損や侮辱を受けた場合の対処方法

それでは、発信者情報開示請求は何のために行うものなのか、その目的を確認しましょう。発信者情報開示請求は、投稿者を特定するための手続きですが、投稿者を特定するのは、相手に対して損害賠償請求や刑事告訴などの法的な手続きをとるためです。

ネット上で誹謗中傷をされた場合、名誉毀損や侮辱罪が成立する可能性があります。事実の摘示によって人の名誉を低下させる行為をしたら名誉毀損ですし、事実の摘示以外の罵倒などの方法で人の社会的評価を低下させる行為をしたら侮辱罪です。

名誉毀損や侮辱罪が成立したら、相手に対して慰謝料などの損害賠償請求ができますし、相手を刑事告訴して処罰してもらうことができます。そのためには、相手の素性がわからないと手続きできないので、発信者情報開示請求が必要になります。

プライバシー権侵害を受けた場合の対処方法

また、ネット上でプライバシー権侵害の書き込みをされることもあります。こうした場合にも、相手に対して損害賠償請求をすることができます。

業務妨害を受けた場合の対処方法

さらに、企業が被害者になるケースでは、ライバル社などから虚偽のレビューや企業の悪口を書かれることにより、業務妨害をされることもあります。こうした場合、業務妨害罪や不正競争防止法違反になることもあります。すると、やはり相手に対して損害賠償請求や刑事告訴をすることが可能です。この場合にも、相手の素性を明らかにする必要があるので、発信者情報開示請求の手続きが必要になります。

以上のように、発信者情報開示請求は、不当な投稿をした相手に対する損害賠償請求や刑事告訴の準備として必要になる手続きです。情報開示しただけでは物事は解決せず、その後あらためて損害賠償請求や刑事告訴などを行う必要があるので、まずはこの点を、抑えておきましょう。

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発信者情報開示請求 手続きの流れ

次に、具体的に発信者除法開示請求を行う場合の手続きの流れを確認しましょう。

サイト管理者を明らかにする

発信者情報開示請求を行う場合、まずはサイト管理者を明らかにする必要があります。
サイト管理者がすぐにわかるサイトもありますが、一見しただけでは誰がサイト管理者かがわからないことがあるからです。この場合にはドメイン登録者に対して情報開示請求を行いますが、ドメイン登録者もわからない場合には、弁護士法23条照会という方法で、調査を行う必要があります。

それでもサイト管理者がわからない場合には、IPアドレスなどから割り出したサーバー管理会社や回線提供会社に対して情報開示請求をします。

サイト管理者に情報開示請求をする

サイト管理者がわかったら、判明したサイト管理者に対して発信者情報開示請求をする必要があります。この場合の具体的な手続方法は、対象のサイトの運営方法によって、やり方が変わります。インターネットサイトには、実名登録型のサイトと匿名で利用できるサイトがあるからです。以下では、それぞれに分けてご説明します。

実名登録型サイトの場合

対象サイトが実名登録型である場合、サイト管理者自身が投稿者の情報を持っています。そこで、サイト管理者自身に対し、発信者情報開示請求を行い、直接投稿者の情報を開示してもらうことができます。

発信者情報開示請求の方法としては、まずは任意で開示を請求する方法がある

ただし、実際には任意で開示されることはほとんどありません。そこで、この場合には、サイト管理者に対し、発信者情報開示請求のための訴訟を提起する必要があります。つまり裁判所で裁判を起こさないといけない、ということです。

裁判において、権利侵害が行われていることや、開示の必要性があることなどを証明することができたら、裁判所がサイト管理者に対し、発信者情報開示命令を出してくれます。このことによって、サイト管理者が投稿者の氏名や住所、メールアドレスなどの情報を開示してくれるので、投稿者の素性が明らかになります。

匿名サイトの場合

次に、匿名サイトのケースを見てみましょう。

経由プロバイダについての情報開示請求を行う

匿名サイトの場合、サイト管理者は投稿者の詳細な情報を把握していません。サイト管理者が知っているのは、投稿者が利用しているプロバイダについての情報のみです。そこでこの場合、まずはサイト管理者に対し、利用プロバイダについての情報開示を請求します。具体的には、プロバイダのIPアドレスやタイムスタンプの開示請求を行います。

任意での開示請求を求めることが多い

稀に任意でも開示を受けることができますが、多くの場合には拒絶されてしまいます。その場合には、裁判所の仮処分という手続きを利用することによって、プロバイダについての情報を開示させる必要があります。仮処分は裁判所の手続きなので、権利侵害があることと開示の必要性を証明する必要があり、適切に手続きができたらサイト管理者に対して情報開示命令が出ます。

すると、サイト管理者から、プロバイダのIPアドレスやタイムスタンプなどの情報が開示されます。

IPアドレスなどがわかったら、それをもとにして経由プロバイダを調査することができます。

ログ保存処分を行う

プロバイダがわかったら、いよいよ投稿者本人についての発信者情報開示請求をするのですが、その前提として、通信ログの保存期間に注意が必要です。プロバイダには、通信ログ管理期間が定められているので、放っておくとログが消されて証拠がなくなってしまうおそれがあるからです。

そこで、ログが消えそうな時期になっているなら、ログを保存するための仮処分を行う必要があります。

投稿者の情報開示請求を行う

ログ保存の手続きが完了したら、経由プロバイダに対し、投稿者本人の情報開示請求をします。この場合にも、まずはプロバイダに対して任意での情報開示を求めることができます。ただ、この場合にもたいていのケースで開示を拒絶されます。そこで、経由プロバイダに対し、発信者情報開示請求の訴訟を起こす必要があります。この裁判は、仮処分ではなく本訴訟となります。

裁判において、権利侵害の事実や情報開示の必要性などの立証ができたら、裁判所から経由プロバイダに対し、情報開示命令が出ます。これにより、ようやく経由プロバイダから投稿者の氏名や住所、メールアドレスや電話番号などの情報開示を受けることができます。

このように、発信者情報開示請求の手続は、非常に複雑で専門的なものとなっています。

犯人特定はネット誹謗中傷問題解決の根本

投稿内容を削除しても、相手には何の痛手もないことが問題

発信者情報開示請求によって犯人を特定する手続きはかなり大変です。このことを聞くと、そんな面倒な手続きをしないで放置しておいた方が良いのではないか?と考える人がいるかもしれません。最低限問題の投稿を削除出来たら、いちいち犯人特定までしなくてもいいと思う人もいるでしょう。

犯人特定はネット誹謗中傷問題を解決するための根本となる手続き

誹謗中傷被害を受けた場合、放っておくと被害がどんどん広がるので、記事削除が必要なことは理解しやすいです。しかし、記事を削除しただけでは、投稿者には何の痛手もありません。こちらが膨大な手間をかけて記事削除をしても、相手にとってはまったく影響がないので、相手はまた同じような書き込みを平気で行う可能性があります。

一度いたずらをしても何も問題が起こらなかったことにより、増長してさらに重大な内容を書き込むおそれもあります。そして、相手が投稿をしたらこちらがそれに対応して削除をする、という繰り返しをして、いたちごっこになってしまうおそれもあります。

こちらは記事削除にお金や労力がかかるのに、相手には何のダメージもないので、いずれはこちらが根負けしてしまうでしょう。このようなことでは、問題が解決されないことは明らかです。そこで、ネット誹謗中傷被害を受けた場合、必ず犯人を特定してペナルティを与える必要があります。

発信者情報開示請求により、相手を反省させる効果がある

ネット上で不当な書き込みを平気でする人は、「バレるはずがない」とたかをくくっていることがほとんどです。そこで、こちらが発信者情報開示請求を行って、犯人に対しプロバイダなどから「発信者情報開示請求照会書」という照会書が送られてきただけでも、非常におそれをなして反省することもよくあります。

発信者情報開示請求照会書とは、情報開示を求めてきた第三者に対し、プロバイダが情報開示に応じて良いかどうかを照会するあめの書面です。このように、犯人特定と損害賠償請求や刑事告訴などの手続きによって、一度犯人を脅かしておいたら、もう二度と同じ被害が起こらなくなるので、効果的に問題を予防解決することができるのです。

6.発信者情報開示請求に弁護士が必要?

それでは、ネット誹謗中傷問題に対応するための発信者情報開示請求を行うとき、弁護士は必要なのでしょうか?弁護士に依頼すると弁護士費用もかかるし大げさなので、なるべくなら自分で解決したいと考えることも多いので、問題となります。

発信者情報開示請求の手続きは、非常に手間のかかるものです。上記で説明したように、サイト管理者が判明しているかどうかによっても対処が異なりますし、サイト管理者がわかっていても、実名サイトか匿名サイトかによっても対処が異なります。

さらに、裁判所の仮処分や本訴訟が必要になるケースがほとんどですが、裁判手続きは複雑で専門的なので、素人が自分ですすめるのは非常に困難です。費用を節約しようとして自分で手続きすると、裁判所で開示命令を出してくれずに手続きに失敗する可能性も高いですし、サイト管理者との間でトラブルになるおそれもあります。

そこで、発信者情報開示請求を行うときには、弁護士に依頼することを強くおすすめします。1回は費用がかかりますが、これによって将来の被害を効果的に防止出来るのだから、投資する価値はあります。

発信社開示請求に強い弁護士一覧

発信者情報開示請求の弁護士費用

発信者情報開示請求の手続を弁護士に依頼すると、実際にはどのくらいの費用がかかるものなのでしょうか?発信者情報開示請求にかかる弁護士費用には、法律相談料と着手金、報酬金という費用がかかります。

法律相談料とは、ネット誹謗中傷問題を弁護士に相談したときにかかる費用のことで、だいたいどこの事務所でも30分5000円(+税)になっています。着手金とは、弁護士に事件対応を依頼したときに当初にかかる費用のことです。事件依頼したときに一括払いするのが原則で、将来帰ってくることは予定されていません。報酬金とは、事件が解決したときにかかる費用のことです。

以下では、具体的なモデルケースによって、弁護士費用をイメージしてみましょう。

ネット誹謗中傷犯人に対し損害賠償請求したケース

法律相談料

まず、1時間の法律相談をしたとして1時間分の1万円がかかります。

発信者情報開示請求にかかる費用

発信者情報開示請求にかかる費用を見てみましょう。相手が匿名サイトを利用しているケースだとします。まずはサイト管理者に対し、任意で情報開示を求めましたが、応じてくれないので仮処分をしました。そこで、着手金が20万円かかりました。その後、プロバイダを調査して、経由プロバイダに対して発信者情報開示請求の裁判を行いました。ここでも、着手金が20万円、報酬金が15万円かかりました。発信者情報開示請求のため、合計で55万円が必要になりました。

損害賠償請求にかかる費用

さらに、判明した相手に対して損害賠償請求を行いました。相手に対して任意での支払いを求めたところ、相手と話合いができて、100万円を支払ってもらえることになりました。このとき、損害賠償請求の着手金が10万円、報酬金が16万円となり、合計で26万円の費用がかかりました。

合計の弁護士費用

以上の弁護士費用を合計すると、法律相談料1万円+発信者情報開示請求にかかった費用55万円+損害賠償請求にかかった費用26万円=82万円の弁護士費用がかかる計算となりました。相手から100万円の支払いを受けられたので、依頼者の手元には18万円が残る計算となります。

これだけを聞くと、あまり利益がないように思えるかもしれませんが、もし弁護士に依頼していなかったら、手元に入ってくるお金は0円です。しかも、相手に対してペナルティを与えることもできず、嫌がらせが継続的に行われる可能性もあったわけです。ここで弁護士に依頼したことにより、手元に18万円のお金が戻ってきただけではなく、将来の嫌がらせの火種も取り除くことができたのですから、大きな利益になっていることは明らかです。

相手からの支払いについては、常に100万円になるとは限らないことに注意が必要

相手に資力があって、任意ですんなりお金を支払ってもらえたら問題解決はスムーズですが、相手が支払いに応じない場合には、損害賠償請求訴訟が必要になります。また、任意請求であっても訴訟をしても、相手が無資力で本当にお金がないケースでは、お金を回収することは難しくなります。

実際に金銭回収できるかどうかについては、相手によってかなり異なってくるので、発信者情報開示請求をする場合には、当初から金銭的な利益を強く求めると、思った結果と違うことになるおそれがあり、注意が必要です。どちらかというと利益は出ないかもしれないけれど、相手にペナルティを与えてもう二度と同じ被害を繰り返させないというくらいの気持ちで臨んだ方が、結果として満足できるものになるケースが多いです。

発信者情報開示請求でネット誹謗中傷の犯人を特定し根本的な問題解決を

以上のように、ネット誹謗中傷被害を受けた場合には、発信者情報開示請求の手続を利用すると、相手の素性を明らかにして損害賠償請求や刑事告訴などの手続きをすることができます。誹謗中傷被害を受けたとき、放置しておくと相手には何のペナルティも与えられないので、相手が増長して何度も同じような嫌がらせが繰り返されたり、書き込みの内容がエスカレートしたりするおそれもあります。そこで、ネット誹謗中傷被害を受けたら、多少手間がかかっても、発信者情報開示請求をして、相手にペナルティを与えるべきです。

発信者情報開示請求をするためには、自分で手続きをすることは難しいので、弁護士に依頼することが重要です。弁護士に依頼するとそれなりに費用はかかりますが、ネット誹謗中傷の問題を根本的に解決できますし、手続きも非常にスムーズに進むので、費用以上のメリットがあります。今、ネット上で誹謗中傷被害に遭って困っているなら、一度早めにネット問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

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