ネット掲示板の誹謗中傷書き込み|弁護士が犯人を特定・削除する手順
ネット掲示板は匿名で手軽に書き込みができるため、特定の個人や企業を誹謗中傷する書き込みが度々みられるようになりました。早急に風評被害を食い止めるためには、書き込みの削除をしたり、犯人を特定する必要があります。そこで、弁護士が削除や犯人特定をするとき、どのような手順を踏んで行っているのかについて解説します。
目次
ネット掲示板の書き込み削除は弁護士に依頼しよう
パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの発達により、誰もがインターネット上の掲示板やSNS、blogにいつでもどこでも気軽にアクセスができるようになりました。その分、インターネットリテラシーのない者たちによる、特定の企業や個人に対する誹謗中傷の書き込みが度々見られるようになりました。
次々に勃興するインターネット掲示板
中でも、2ちゃんねるに代表されるインターネット掲示板は次々と生まれる傾向があります。ネット掲示板に書き込まれている情報は玉石混交ではあるものの、そこに記載されている内容を参考にする人も増えてきました。
物やサービスを購入するときの参考にしている人が多い
ネット掲示板には、商品やサービスを利用した時の感想も多く見られます。そのため、インターネットで何かの商品やサービスを購入する際に、そこの情報を参考に購入行動を決める人も増加しています。
就職・転職活動の企業研究に使われることも
また、就職・活動をする際にも、企業研究の一環で、これらの掲示板に「ブラック」な噂が書き込まれていないかをチェックする人もいます。ネット掲示板の情報を100%鵜呑みにするわけではありませんが、そこに悪評が書き込まれているからと言って求人への応募を躊躇したり、取りやめる人もいます。
ネット掲示板の削除を弁護士に依頼したほうが良い理由とは
ネット掲示板にいったん誹謗中傷する内容が書き込まれると、瞬く間に悪いうわさが広がってしまいます。特に、2ちゃんねるの場合は数々のミラーサイト・コピーサイトと呼ばれるサイトがあり、そこにどんどん転載されるため、被害が広がってしまうのです。迅速に書き込みを削除するためにも、ネット問題に強い弁護士に送球に相談することが大切です。
法律上の代理行為ができるのは弁護士だけ
弁護士以外の者が依頼人の代理で法律事務を行うことは、弁護士法上禁止されています。そのため、サイト管理者などに書き込みの削除を依頼したり、発信者情報開示を請求することは弁護士しかできないのです。
根本的な解決になる
民間の誹謗中傷対策業者を利用する方法もありますが、誹謗中傷対策業者が書き込みの削除をできるわけではありません。業者が行うのは、検索エンジンの表示順位を下げたりして誹謗中傷の書き込みを見えにくくすることがほとんどです。一方、弁護士であれば、削除対応ができるため、根本的な解決につながると言えます。
長い目で見れば削除費用もおさえられる
また、民間の誹謗中傷対策業者に対策を依頼すれば、最初のうちは弁護士費用より安くすむかもしれません。しかし、対策をしている間は毎月費用がかかり、トータルで考えると高額な費用を支払うことになります。長い目で見れば、弁護士費用のほうが安く済むこともあるので、よく比較検討することが大切です。
ネット掲示板の書き込みを削除する方法
弁護士を通じてネット掲示板の誹謗中傷書き込みを削除するには、裁判手続きを踏むか否かに関わらず、まずは証拠を保存することが非常に重要です。誹謗中傷の書き込みのある画面のキャプチャを取っておいたり、画面を印刷したりして、証拠をきちんと残しておきましょう。
裁判外で削除申請をする場合
裁判外で削除申請をする方法は2通りあります。どちらも一長一短があるので、それぞれどんな特徴があるのかについて見ていきましょう。
専用フォームやメールを使って申請するケース
掲示板に削除申請専用の問い合わせフォームやメールアドレスの指定があり、そこからの依頼が適切に処理をされているとわかっている場合は、そちらから申請を行います。早ければ数日以内に削除されるケースもありますが、管理人がフォームからの申請をきちんとは把握していない場合は回答がないケースもあります。
送信防止措置依頼書を使用するケース
プロバイダ責任制限法のガイドラインに則り、送信防止措置依頼書を使って申請を行う方法もあります。これは個人や企業の権利侵害が明らかである場合に使用します。比較的削除には応じてもらえやすいものの、発信者情報開示請求については慎重なところが多く発信者情報開示まで求めることは難しいでしょう。
ネット掲示板削除の仮処分申請をする場合
上記の2つの方法で対応してもらえない場合は、裁判所へ削除の仮処分申立てを行います。一番手間もコストもかかりますが、裁判所の仮処分決定が得られたら、それがある程度の強制力を持つため、確実に削除に対応してもらえることが多いと言えます。
申し立てをする裁判所の選び方とは
ネット掲示板への誹謗中傷の書き込みは法律上「不法行為」にあたります。そのため、削除請求の仮処分を申請する際には、「不法行為のあった地」を管轄する裁判所に申立てをします。実務上では、被害者の住所地・加害者の住所地のどちらの裁判所への申立ても認められています。
手続きの手順
必要書類をそろえて裁判所に提出し、不備がなければ債権者面接の運びとなります。そして、双方が意見を述べる双方審尋のための日程調整が行われ、期日に双方審尋を実施します。その後指定された供託金を差し入れると、仮処分命令の発令となり、決定製本が交付され、終了となります。
ネット掲示板に書き込みをした犯人を特定する方法
誹謗中傷の書き込みをした犯人を特定するために、プロバイダ責任制限法で発信者情報の開示を請求できる権利が認められています。原則として、サイト管理者(コンテンツプロバイダ)への請求とインターネットサービスプロバイダ(以下「ISP」)への請求の2回、発信者情報開示請求を行うことになります。
サイト管理者へのIPアドレス開示請求
サイト管理者が持っている情報は、IPアドレスやタイムスタンプのみであり、発信者情報そのものを持っているわけではありません。そのためISPへの発信者情報開示請求の前に、発信者のIPアドレスを入手することが必要です。そのため、まずはサイト管理者へ発信者のIPアドレス開示請求を行います。
ガイドラインに則っての請求
IPアドレス開示請求は、原則としてプロバイダ責任制限法のガイドラインに則った方法で行います。開示請求を受けたサイト管理者は発信者に情報を開示してよいか照会しますが、発信者の連絡先がわからなければこの手続きは省略されることもあります。
仮処分申請を通しての請求
ガイドラインに則った請求をしても、発信者の同意が得られないなどの理由からIPアドレスとタイムスタンプの情報が開示されなければ、裁判所へ情報開示の仮処分の申し立てを行います。仮処分決定を得られたら、ほぼ確実にそれらの情報を開示してもらえます。
インターネットサービスプロバイダへの請求
サイト管理者からIPアドレスとタイムスタンプの情報が開示されたら、次はISPに発信者の氏名や住所等についての開示請求をします。発信者情報を確実に得るために、ISPへの開示請求は原則として訴訟を提起して行うのがベストです。
ISPを特定する
ISPがわからない場合、IPアドレスから「whois検索」を使ってISPを特定します。検索をかけるとISPの企業名が出てくるので、発信者情報開示請求はその企業に対して行うことになります。
アクセスログ保存要請
ISPが保有しているアクセスログは最長でも3~6か月しか保存されません。そこで、ISPに対して、まずアクセスログの保存要請を行います。要請は書面で任意に行う方法もあれば、裁判所に発信者情報消去禁止仮処分の申立てを行う方法もあります。
開示訴訟
アクセスログの保存に成功したら、発信者情報開示訴訟の手続きに入ります。訴訟はISPの住所地を管轄する裁判所で行います。ISP側は発信者に情報を開示するか否かの意見照会を行い、同意すれば判決を待たずに開示されることもありますが、開示を拒否した場合は裁判で争うことになります。ほとんどは2~3回の口頭弁論を経て結審します。
書き込みの削除も発信者方法開示請求も、成功率を上げるためには裁判所での仮処分決定を得て行うことがベストであると言えます。その際は、ネット問題に強い弁護士に手続きを依頼するとスムーズに事が運ぶでしょう。